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ジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』①「七王国の玉座」(A GAME OF THRONES)感想 ドラマとの違いは?

 シーズン7の放送でゲーム・オブ・スローンズ熱が再燃し今更原作を読み始めてみたのでちょっとドラマとの違いなんかを。シーズン7までのネタバレがあるので注意してください。

ていうかそもそも「ゲーム・オブ・スローンズ」って第1巻の原題だったんですね。

 

プロローグ

ドラマでは詳しく触れられてなかった部分だけど、原作では冒頭に登場する〈冥夜の守人〉3人について人物像が紹介されている。

3人の中で粋がっていたのは名門ロイス家のサー・ウェイマー・ロイスで、功を焦る彼をモーモント総帥も無下には扱えず出動させたという経緯があったらしい。

ロイス家は東部総督アリン家の有力な旗主なんですけど、ドラマだとかなり影薄いですよね。ヨーン・ロイスとかどこで出てたっけ?ってぐらいのイメージ。

あと、ドラマではギャレッドが殺されてウィルが逃げ出すんだけど、原作だと逆でした。ギャレッドは特に台詞もなく処刑されてしまいます。

 

ジョン

ジョン・スノウのパートはほとんどドラマと同じでした。ただ原作では14歳という設定なので、年相応に幼い言動もやや多かった印象。

ドラマ以上にティリオンとの絡みが多くて、よりお互い打ち解けた感じになってましたね。〈冥夜の守人〉の新兵のほとんどはまともな剣術指南を受けてきていないんだ、とジョンを諭すのはティリオンではなく武具師のドナル・ノイの役目になっていました。

あとは、サムを雑士として使って欲しいとメイスター・エイモンを説得するエピソードなんかもドラマには無かった部分ですね。ここは良いシーンなので映像でもちょっと観てみたかった。雑士は重要な仕事だみたいなこと散々語った後でいざ自分が雑士に選ばれると癇癪起こすのはちょっと現金な気もするけど。

原作だと〈誓約の兄弟〉も出てくる名前が多くて覚えるの結構大変ですね。ドラマだとせいぜいサム、ピップ、グレン、エッドぐらいしか覚えてませんでしたよ僕は。

 

ブラン

ブランのパートも概ねドラマと同じです。こんなにしっかりしててまだ7歳なのかよってびっくりしますけど。

キャトリンはジョンを除く子どもたち全員を深く愛していますが、とりわけブランを可愛がっていたようです。あれだけ付きっ切りで看病していたのも頷けます。

ドラマでカットされてたエピソードといえばダイアウルフの名前で悩むところくらいかな。兄弟たちがさっさと名前を決めていく中でブランだけはどうしても決められなくて(先に「ゴースト」を思いつけばよかったとか「シャギードッグ」なんて変な名前だとか色々感想言ってて面白い)、塔から転落した時に壁の向こうの夢を見て〈冬来たる〉とは対称的な「サマー」という名前を付けるっていう流れ。

余談だけどドラマでは特に触れられていなかったダイアウルフたちの名前の由来が説明されてましたね。一番速く走るから「グレイウィンド」とか、決して物音を立てないから「ゴースト」とか。「ナイメリア」っていうのはロイン人の戦士女王の名前で、確かにアリアが好きそうな感じがする。「レディ(貴婦人)」もいかにもサンサらしいネーミング。そういえばレディを演じた犬はあの後サンサ役のソフィー・ターナーが引き取ったらしいですね。

 

サンサ

サンサはドラマ以上に夢見がちな少女という面が強く、この頃はちょっと鼻持ちならない感じ。心底ジョフリーに熱を上げていて、アリアに対してかなり邪険。まあ良くも悪くも年相応の女の子というか。ドラマだとほとんど絡みがなかったので分からなかったけど、落とし子のジョンについても思うところがあり距離を置いていたらしい。それを知った上だと、シーズン6・7のジョンとサンサの間の微妙な空気感とかもより面白く思える。お互いの成長も感じるし。

あと、原作だとエダードがサンサとアリアを王都から連れ出そうとする時に、ジョフリーと離れたくないあまりサーセイにそれを告げ口するという痛恨の失態を犯してしまっているんですよね。その結果娘を人質に取られたエダードがあんな目に遭うわけですから、これは相当責任感じますよね。

それからハウンドとの絡み。ドラマだとハウンドの火傷の理由を教えてくれるのはリトルフィンガーでしたが、原作ではハウンド本人から教えてもらいます。これは原作の方が良かったな。ハウンドが本当は心優しい人物だってことも分かるし、まあドラマの場合は尺の都合があるんでしょうけど。

ちなみにドラマだと名前すら出なかったサンサお付きの女司祭の名前はセプタ・モーデインでした。結構台詞も多い。

 

アリア

アリアは兄弟姉妹たちの中でもジョン・スノウとの仲の良さが特に強調されていました。サンサと違ってまったく女性らしさのない自分と、私生児という立場で疎外感を感じているジョンとの間に通ずるものがあったようです。ドラマでも仲良く話すシーンはあったけれど、原作では離れ離れになってからもお互いに恋しく思っている描写が多くて可愛い。それと、原作の設定ではエダードの子どもたちの容姿はタリーの血を色濃く受け継いでいて、スターク家の特徴を持つのはジョンとアリアだけということらしいです。それでアリアは自分も私生児なのではないかと疑った過去もあったり。

ドラマでアリアを演じているメイジー・ウィリアムズちゃんはすごく可愛いんですけど、原作だとアリアは容姿に自信がなくて周りから〈馬面のアリア〉なんて呼ばれたりしてます。しかしネッドによれば、美人と呼ばれていたリアナ・スタークに似ているとのことです。ジョンの出自を知った後だと、ふたりの顔が似ているという設定も何か思わせぶりな感じがしますね。特に意味はないんでしょうけど。

それから、シリオ・フォレルとの稽古について。シリオ自身の出番はドラマより少なくて(ドラマでもかなり少ないけど)、「まだ死なぬ」のくだりも原作だと無いんですけど、ピンチになるとシリオの様々な教えを脳内で反芻するなど、アリアの中でその指導が活きています。ネッドやサンサはシリオの奇抜な指導に呆れてたみたいですが。予定通りならシリオもウィンターフェルについてきてくれるつもりだったようです。

しかし、小説でもやっぱりシリオの生死については明言されてないんだよなあ。ドラマじゃもう出番は無さそうだけど、復帰を期待してます。

 

キャトリン

ドラマ以上にジョンに対する態度が辛辣だった。ジョンの姿を見るだけでネッドの裏切りを思い出して、本当に憎しみを隠しきれないみたいです。ジョンがブランのお見舞いに来た時に「お前が代わりに死ねばよかった」なんて言い放つくらいですからね。しかしいくらなんでも冷たすぎませんか。

ネッドがジョンを〈冥夜の守人〉に入れることを決めた最大の理由も、ジョンがウィンターフェルに残ることにキャトリンが耐えられないということが決め手でした。ネッドもキャトリンには真相を打ち明けたらいいのにと思う部分がある反面、この態度のお陰である意味ジョンは疑われることなく安全に生きてこられたのかなという一面もあるので難しいところ。まあジョンには気の毒だけど。

ただその点を除けば、キャトリンはかなり賢明さも持ち合わせた人物なんだなというのは読んでて感じました。ロブが挙兵する際にはかなり適切なアドバイスをしていたし、ウォルダー・フレイやシオンに関する警告も結果的に正しかったですしね。

旅籠でティリオンを拉致したのは完全に失策だったけど(これが原因でネッドが死んだと言っても過言でない)、ウィンターフェルに向かうと見せかけてあのティリオンを出し抜いたところなんかはなかなかやるなと思った。

たぶん子どもたちに関する私情が絡まなければ賢い人なんでしょうね。

ちなみにリトルフィンガーに対する愛情は弟に向けるそれで、異性としてはまったく関心が無かったようです。まあそりゃねえ。

 

エダード

ネッドの章を読んでて感じたのは、リアナとジョンに関する伏線をかなり散りばめているなということです。リアナの「約束して、ネッド」という台詞が繰り返し登場していて、ジョンの出自についても色々と濁していて、かなり思わせぶりです。もっとも、真相を知った後で読むからそう感じるだけで、初見だったらまったく気が付かなかっただろうけど。

兄のブランドンこそウィンターフェル城主にふさわしい人物だったと語っていたりして、ドラマでは分からなかったけど実はどこか引け目を感じている部分があったんだなという部分も分かったりして面白かったです。あとジョラーとお互いにめちゃめちゃ軽蔑しあってて笑った。

それから、ドラマではシーズン6で初めて描写された〈喜びの塔〉での戦いについてこの時点で既に触れられていて驚いた。サー・アーサー・デインを始めとする〈王の楯〉たちがネッドらと対峙して順番に喋るところバトル漫画っぽくてかっこよかったよ。でも貴重な戦力なんだからリアナの警護よりトライデント河とか王都とかに回すべきだったのではという気がしないでもない。そういえばドラマでは不明だったけど、〈喜びの塔〉の戦いでネッドと共に唯一生き残ったハウランド・リードはまだ存命のようです。この後の展開は分からないけど、ジョンの出自を証明する生き証人になるのでは。

それにしてもネッドのパートは今読むと「ここでああしておけば!」と思うシーンが多くて歯がゆい。まあそれをできないのがネッドという人間なんだけど。ちなみにベイラー大聖堂での処刑シーンはネッドの視点から描かれるのかと思ってたけどアリア視点でしたね。

 

ティリオン

ドラマ版でティリオンを演じるピーター・ディングレイジは男前だけど、原作のティリオンは奇形で両目の色も違って、かなりおぞましい見た目のようです。でも話す言葉には含蓄があって、やっぱりドラマ同様かっこいいなと思いました。ジョンだけでなく、モーモント総帥やブランからも好感を持たれていたみたいです。

ティリオンの旅はドラマだと結構省かれている部分も多くて、特にアイリーへの珍道中は面白かったです。ブロンの他に、間抜けな吟遊詩人のマリリオンが出てきたり。行きでは殺し合った山の民を帰りでは金で手懐けるってのが良いですよね。しかしアリン家はよくあんな物騒なところに住んでるな。

前衛を務めさせられたスターク勢との戦争シーンについて、ドラマではのっけから昏倒してしまったのに対して、原作だとちゃんと最後まで戦ってました。あとシャッガとかティメットみたいな山の民たちの出番が割と多い。

しかしこの頃はタイウィンとの間には敵愾心がありつつも割とうまくいっている感じがするんですけどねえ。どうしてああなってしまうのか。

 

デナーリス

地の文だとデナーリスは基本的にダニーって呼ばれてるので、最初はちょっと違和感ありました。ドラマだとほとんど名前呼ばれないですからね。

 概ねドラマ通りだけど、ドスラク人の風習とかエッソスにやってきてからの生活とか細かい設定が色々分かって面白かった。血盟の血ってドラマじゃ何の説明も無かったけど〈王の楯〉みたいな存在だったんですね。あとジリとかドリアとかジクィとか誰が誰か全然分かってなかったよ。

ドラマだと大人の色気に溢れた二枚目なおっさんのジョラーですが、原作では毛深くていかつい男のようです。ヴィセーリスのこと結構ボロクソにけなしてて笑った。

そのヴィセーリスは、原作だと輪をかけてろくでもない奴でした。デナーリスがせっかく用意した贈り物を無下にしたり、ヴァエス・ドスラクの伝統完全に無視したり。そりゃジョラーにも愛想尽かされるでしょう。さすが狂王の息子というべきか(僕は結構好きだけど)。逆にデナーリスはレイガーに似ていると評されていました。

デナーリスはヴィセーリスに虐待されて育ってきたようですが、やはりたった一人の肉親である兄に対する愛情は多少あったようです。当初はターガリエン家の風習に従ってヴィセーリスと結婚するものと覚悟してたらしい。

しかし妖女のミリ・マズ・ドゥールって結局何者だったんですかね。

 

その他

ちょっと気になった人たちについて。

ロブ

ロブは視点人物ではないので心情などは描かれません。なので主にブランやキャトリンの目から描写されることになります。

ジョンと同じ14歳で、あの年で北部諸侯を率いるのはそりゃあ大変でしょうね。カースタークとかボルトンとか曲者揃いですし。ただネッドからはスターク家の跡取りとしてそれなりに教育を受けてきたようです。ラニスター軍との戦いはドラマではあっさりでしたが、原作だと軍隊を分ける計画など色々細かく作戦を立てるシーンや戦地でのシーンもあります。諸侯の前では気を張ってるけど母親の前では年相応になるところとか結構可愛げがあるなと思った。

 

リコン

リコンはドラマ同様ほとんど出番はありませんが、親兄弟がいなくなったことで拗ねてしまってかなりわがままになっているようです。まだ4歳なので当然といえば当然ですけど。

シャギードッグはダイアウルフたちの中でもかなり凶暴らしく、メイスター・ルーウィンにまで怪我を負わせてしまい繋がれている状態です。飼い主に似るんですね。

 

シオン

スターク家の人たちはシオンのことをどう思ってるのか気になってたんですけど、キャトリンはあまり信用できないと考えていたらしく、またブランもシオンのことは好きになれないと語っていました。シオン自身ひねくれた性格だから仕方ないけど、ブランにまでそう思われてたのはちょっと意外でした。ただロブとはそれなりに仲が良かったようです。

 

スタニス

スタニスはドラマ同様1巻時点では直接登場はしませんが、名前はしばしば出てきます。原作ではジョン・アリンに同行してロバートの落とし子を探していたようです。ジョン・アリンは息子のロバート(ドラマではロビン)をライサから引き離してスタニスの養子にするつもりだったらしいので、ふたりの間にはそれなりの交友関係があったのでしょうか。結果的にその決断がライサを怒らせ、ジョン・アリンの死に繋がるわけですけど……。

スタニスはネッドがキングズ・ランディングに到着した時点で既にドラゴンストーンに引き返しており、恐らくこの時点で既に玉座争奪に向けた準備をしていたものと思われます。〈紅の女〉と出会ったのはどの時点なのかな。

原作の序盤ではスタニスがジョン・アリンの死に関与しているのではとネッドが訝しむシーンもあるんですよね。真相知らないと確かに怪しく見えるかも。

ちなみにスタニスは小評議会七王国における売春宿の禁止を提唱していたようです。いかにもスタニスらしい。そりゃ女好きのロバート王とは相容れないよなあ。 

そのエピソードが、アリン公とスタニスが娼館に行ったという話を聞いたネッドが、スタニスに限って女遊びのはずがないと調査に向かう場面に繋がってくるのも面白かった。

 

レンリー

原作のレンリーはとてもハンサムで、若い頃のロバートにそっくりと評されています。

〈王の手〉主催の馬上槍試合にも出場していますが、ハウンドに敗れました。

良くも悪くも軽薄なノリの人物で、人望はありますがネッドはあまり好感を抱いていなかったような印象。

レンリーの提案通りネッドが彼と組んでたらどうなっていたのかなあ。タイレル家と北部諸侯も付いてくるだろうから、〈王都の守人〉なんて物の数じゃないだろうし、確実にラニスター家を圧倒することはできましたよね。ただ結局メリサンドルの呪いかデナーリス・ターガリエンにやられちゃってたかも。

トライデント河でのジョフリーとアリアの揉め事をロバートが聞かされている時に、レンリーが大笑いしすぎて部屋から追い出されるシーンはちょっと面白かった。これドラマでも観てみたかったな。

 

バリスタン・セルミー

個人的に好きな登場人物のひとり。〈豪胆(ボールド)バリスタン〉の異名を取る伝説的な騎士です。本人はオールド・バリスタンって自虐してたけど。

ブランは〈王の楯〉に憧れていて、王都でバリスタンに会うことを楽しみにしていたそうです。

原作ではバリスタンの過去にもちょっと触れられていて、元々ロバートの反乱の際は狂王エイリスの〈王の楯〉として獅子奮迅の活躍をしていたらしい。戦争の後でロバートは彼を許して、引き続き彼の〈王の楯〉として働くことになったとか。

ターガリエン憎しのロバートがよく敵側に付いてたバリスタンを傍に置いてたなって思ってたんだけど、勇敢な戦士には融通を利かせる懐の広さも持ち合わせた人物だったようですね。

ネッドも高潔な騎士であるバリスタンのことはとても高く評価していました。ドラマでも「サー・バリスタンには手を出すな」って言ってましたもんね。

なお、バリスタンの解任はどうやらサーセイの独断だったよう。ジェイミーを総帥に付けるためだったんだろうけど、それを聞いたタイウィンは呆れていました。国中で英雄視されているバリスタンがスタニスやロブの側についたら民衆はどう思う?と。こういうところやっぱりサーセイは浅はかですよね。

 

ウォルダー・フレイ

ゲーム・オブ・スローンズファンの中では悪名高いであろうウォルダー公ですが、ドラマよりちょっと台詞が多かったです。キャトリンの父ホスター・タリーとの間にはかなり遺恨がある様子。〈遅参公〉という渾名は故フレイ公(The Late Lord Frey)という意味にもなる侮蔑的なダブルミーニングがあるみたいですね。

あと、妻や子どもたちがウォルダー公のご機嫌取りのためにこぞって自分の息子にウォルダーって名前を付けるせいで一族がウォルダーだらけになってるらしい。

邦訳だと口癖で「へー」っていう台詞が多くてなんか面白かった。

 

総評

とにかく情報量が多くて読みごたえがありました。まだ第1巻ですけど、登場人物はドラマシーズン1の2,3倍ぐらい出てるんじゃないでしょうか。ウィンターフェルの使用人たちとか、北部諸侯とか、カール・ドロゴの部族(カラザール)とか、細かい人物たちにも名前があってなかなか混乱します。

他にもウェスタロスの地名とか歴史とか世界観とか、ドラマで前提知識があったから読みやすかったけど、いきなりこれ読んだとして理解できたかはちょっと怪しいかも。

でもその分、細かい心理描写や設定まで踏み込んでいたので感情移入もできて良かったです。正直ドラマのシーズン1って溜めの時期というか、盛り上がるまでの前振り的な部分なので地味な展開が多いんですが、原作はこの時点で既に十分面白かったです。

ドラマ気に入った人なら原作もかなり楽しめると思いますよ。文量はなかなかですけど。

今第2巻『王狼たちの戦旗』を読んでる途中なんですが、登場人物もいよいよ多くなってきて、大変だけどさらに面白くなってきてます。

いずれ2巻も読み終わったらまとめたいけど、いつになるのかなあ。