高慢と偏見と萌豚

公開から約二週間が経過しましたが、みなさんアン・リー監督最新作『ジェミニマン』はもうご覧になられましたか。

あれ見る時間で『空の青さを知る人よ』見たほうがいいと思いますよ。だいたい同じような話だし相生あおいちゃんが萌え萌えなので。

theriver.jp

 

ジェミニマン』は正直微妙だったけど、アン・リー作品はけっこう好きなのが多い。

ライフ・オブ・パイ』は人生で見た映画の中でもベスト30に食い込むぐらいお気に入り。このあいだ久々に見たんだけど、1回目の時とは全然違う視点で見ることができた。

ジョーカーとミステリオが禁断の恋に落ちる『ブロークバック・マウンテン』も名作。

ヒース・レジャーホアキン・フェニックスの演技を見たらどう感じたのか気になる。

最近見た『いつか晴れた日に』もなかなか良かった。

ジェーン・オースティンの『分別と多感』を原作とした作品で、ヒュー・グラントアラン・リックマンといったシブいおっさんたちが初心な恋愛をしてるのが面白い。実質『ラブ・アクチュアリー』だった。

いつか晴れた日に (字幕版)

いつか晴れた日に (字幕版)

 

 

ところでジェーン・オースティンといえば、最近HuluBBC版『高慢と偏見』を見つけたので視聴してみたんだけど、意外にハマっちゃったので久しぶりに映画と小説の方も見返した。

 

来年1月には『ダウントン・アビー』の劇場版も控えているので、たまにはこういう作品も見てモチベーションを高めておきたい。という非常にニッチな話題。

 

 

 

高慢と偏見』について

高慢と偏見』(Pride and Prejudice)はジェーン・オースティンによって1813年に刊行された恋愛小説であり、もはや説明不要の不朽の名作である。

これまで幾度となく映像化されてきており、とりわけ1995年にBBCで製作されたドラマシリーズは当時絶大な人気を誇り、放送時間になると通りから人がいなくなったというのも有名な話。

 

身分は高くないが鋭い感性を持った娘エリザベスと大富豪だが鼻持ちならないダーシー氏が、偏見や高慢といったお互いの短所を乗り越えながら惹かれあっていくというのが大体のあらすじ。

今さら紹介するようなものでもないが、この作品の魅力はなんといっても登場人物たちの強すぎる個性と丁々発止の掛け合い。

皮肉屋で放任主義のベネット氏、過保護でヒステリックなベネット夫人、人を疑うことを知らない長女ジェイン、お転婆で頭のねじの緩んだ末娘リディア、空気の読めない滑稽な牧師コリンズ、お人好しのビングリー、ハンサムだが信用ならないウィッカムなどなど、キャラのクセがやたらに強くて面白い。

なかでもやはりエリザベスとダーシーの舌戦はウィットに溢れていて非常にユニーク。

 

また、当時の時代背景や女性像を色濃く感じ取れる作品でもある。

主人公のエリザベス(リジー)・ベネットはジェントリ階級出身なのでけっして貧しい家柄ではないが、女性であるためベネット家の財産を相続することができない。*1

当時の女性は夫の庇護下に入る以外で生計を立てる手段がほとんどなく、結婚は人生を左右する一大イベントでもあった。

つまり、エリザベスたち未婚女性にとって結婚とは単なる恋愛の延長線にあるものではなく、身を立てるための生存戦略であったと言える。

 

一方のミスター・ダーシーは貴族の血を引き、ダービシャー州に広大な領地を持つ正真正銘の紳士。ずば抜けた美貌も財産もないエリザベスなど、本来であれば鼻も引っ掛けない存在だったはずが、いつしかその機知に富んだ性格に惹かれるようになっていってしまう。

 

エリザベスとダーシー、そしてその周りの様々な人物たちによって繰り広げられる駆け引きが本作の最大の見どころ。これが本当の恋愛頭脳戦である。

 

ぼくは基本的に学園ハーレムラブコメラノベアニメ以外の恋愛ものにはあんまり興味がないんだけど、先に触れたとおり海外ドラマ『ダウントン・アビー』の大ファンなので、この手のジャンルはけっこう取っつきやすい。(ドラマ劇中でも『高慢と偏見』に言及してるシーンがある)

ダウントン・アビー、良いドラマなのでたくさんの人に見てもらいたい。アイアンマン3で上品なドラマだって言ってたけどそれはちょっと疑わしい。

 

最初に映画『プライドと偏見』を見たあとで小説も読んだんだけど、内容も文体もシンプルなのでスラスラ読めた。

ちなみにぼくが読んだのは光文社古典新訳文庫版と新潮文庫版ですが、後者は注釈も充実していて特に読みやすかったです。

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

 
自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)

 

 

 ちなみに女子小学生向けのやつもあるらしくて内容がめちゃめちゃ気になってる。

100年後も読まれる名作(10) リジーの結婚 プライドと偏見
 

青年男性の萌豚が買ったら逮捕されたりしないか心配。 

 

映像化作品

前述したように『高慢と偏見』は数多く映像化されているので、メディアごとに違いを比較できるのが面白い。ぼくが見たことがあるのは以下の3種類だけだけど、もっと昔に作られたものもあるらしい。

 

高慢と偏見』(1995)

高慢と偏見[Blu-Ray]

高慢と偏見[Blu-Ray]

 

映像化されたなかではもっとも有名で評価の高いBBC版。

今日では『キングスマン』や『英国王のスピーチ』で知られるコリン・ファースを一躍スターダムに押し上げた出世作でもある。

全6話のドラマシリーズでじっくりと描かれるので、もっとも原作に忠実でわかりやすい。また、それぞれのキャラクターも原作のイメージに近い。

コリン・ファース演じるダーシーが湖で水浴びするサービスシーン(※原作にはない)に英国中の女性が悶絶したとかしないとか。

とりあえずこれを見ておけば間違いなし、という信頼の作品。

ただ、エリザベスはもうちょっと可愛くてもよかったんじゃないかな……。

 

プライドと偏見』(2005) 

プライドと偏見 (字幕版)

プライドと偏見 (字幕版)

 

こちらは映画版。主演はキーラ・ナイトレイマシュー・マクファディン

サクッと2時間でまとまっているので、小説やドラマは時間かかるからちょっと…という人でも気軽に楽しめる。

ドラマ版とは真逆で、こちらはエリザベスが美人すぎる。天真爛漫な笑顔やお茶目な仕草が非常に愛らしいのだが、姉妹で一番の美人という設定のジェインより可愛くなってしまっているのはそれはそれでどうなんだろうという気がしないでもない。

恋愛映画らしいロマンティックな演出を重視しており、原作と比べて皮肉控えめのまっとう(?)なラブロマンスに仕上がっている。

ミスター・ダーシーの生え際が若干気になってしまうという問題はあるが、吹替の声が東地宏樹なので5割増しでカッコよく見える。

2時間にまとめている都合上、ドラマ版と比較すると描写不足な部分は多いものの、入門として最初に見るにはちょうどいい作品だと言える。

ぼくもはじめにこれを見ました。

ちなみにDVDの未公開映像では原作にはないオリジナルのエピローグが見られるのだが、ダーシーがなんかキモいので本編ではカットして正解だったと思う。 

 

高慢と偏見とゾンビ』(2016) 

高慢と偏見とゾンビ(字幕版)
 

もし『高慢と偏見』の世界にゾンビが現れたら……という気が狂ってるとしか思えない世界観で描かれるパロディ作品。 

もとはと言えばこの映画が見たくて元ネタを調べるようになったので、『高慢と偏見』を知るきっかけをくれたこの映画には頭が上がらない。

しっかりと原作のストーリーをなぞりつつ、要所要所でいきなりゾンビを絡めてくるので笑っちゃう。

単にゾンビ目当てで見るとやや物足りなさはあるかもしれないが、『高慢と偏見』のパロディ映画として見る分には十分楽しめる作品だと思う。

ダウントン・アビー』のローズや『ゲーム・オブ・スローンズ』のラニスター親子なんかが出演してて個人的にはテンションの上がるキャスティングだった。

 

知ってほしい、ジョージアナちゃんの魅力

高慢と偏見』について書かれた記事はそれこそ星の数ほどあるんだけど、本作の登場人物の一人であるジョージアナ・ダーシーについて触れているものがあまり見当たらないのがちょっと寂しい。 

それも当然のことで、本作の主軸となるのはエリザベスとダーシーの恋愛模様なのであり、ジョージアナは言ってみれば脇役である。(『高慢と偏見とゾンビ』の映画に至っては登場すらしない)

 

でもぼくはジョージアナちゃんにもっとスポットを当ててもらいたい。

なぜなら、彼女が兄さん大好き妹だからである。

熱心な原作ファンの方には大変申し訳ありません。

 

ジョージアナ・ダーシーとは

ジョージアナ・ダーシーは作中のある事件に関わりを持つ重要人物ではあるのだが、本人の出番はそれほど多くない。

彼女はミスター・ダーシーのたった一人の妹で、序盤から度々言及されることはあるものの、実際に登場するのは作中後半になってから。

年収1万ポンドの大地主ダーシーの妹ということはすなわち、名家のご令嬢というわけである。

ぼくはまずもって上流階級のお嬢様という設定に弱いので、それだけですぐ好きになってしまう。ところで忘れがちですがアイリ・アーカディアちゃんもアーカディア帝国のお姫様なんですよ。

 

ダーシー兄妹の両親ははやくに亡くなっているため、年の離れたミスター・ダーシーが父親代わりの後見人となって彼女の面倒を見てきていた。そういった経緯やミスター・ダーシー自身の人柄もあって、ジョージアナは兄を心から尊敬しているのである。

 

エリザベスによるジョージアナ評

ミス・ダーシーは背が高く、エリザベスよりも大柄だった。十六歳になったばかりだが、姿形はもう大人で、女性らしいたおやかな様子をしていた。顔立ちは兄ほどくっきりしてはいないが、表情に知性と気立てのよさが表れており、物腰も全く気取りがなくて柔らかだった。ミスター・ダーシーの妹だけに、よほど鋭い眼で遠慮なく観察されるのではないかと思っていたエリザベスは、兄妹の気質がずいぶん違うのでほっとした。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4733-4738). Kindle 版.

 

年齢は16歳。兄とは10歳差。芸事に秀でており、エリザベスを含め作中に登場するほとんどの人物から好意的な評価を受けている。兄のダーシーもしょっちゅう手紙を書いたりピアノを買い与えたりなど並々ならぬ愛情を注いでいることがわかる。

また、鋭く他人を批評する兄とは違って大人しくおっとりとした性格のようである。

 

ジョージアナちゃんのココが可愛い 

せっかくなのでジョージアナちゃんの可愛いシーンを抜粋してみます。

 

 ミス・ダーシーもこちらと同じくらい緊張している様子だった。ラムトンに着いて以来、ミス・ダーシーはたいへんお高くとまっているとエリザベスは人の噂に聞いていたのだが、ほんの数分も一緒にいると、それは単に極度の恥じらいのせいだと分かってきた。「はい」「いいえ」といった受け答えだけで精一杯の様子なのだ。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4730-4733). Kindle 版.

 

ダービシャーでエリザベスとはじめて対面した時の様子。

エリザベスと読者はこれまでミス・ダーシー(=ジョージアナ)は兄同様に高慢な性格なのだとばかり思っていたのだが、実際にはそうでないことが明らかになる。ジョージアナは尊敬する兄からエリザベスがいかに素晴らしい女性かを聞かされているので、非常に緊張している。ようやく対面したエリザベスを前にしていっぱいいっぱいになっちゃっている姿が想像されてかわいい。

  

ジョージアナの出迎えはきわめて丁重だったが、恥ずかしいのと何かへまをしないかという怖れとで、彼女はこの上なく緊張していた。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4850-4852). Kindle 版.

 

エリザベスがダーシー家の所有するペンバリー館に招待されたときの様子。いつも恥ずかしがってて可愛い。ジョージアナは慣れないホスト役を務めているのでますます緊張している。

 

ミス・ダーシーは会話に加わる勇気が欲しいと念じているようだったし、実際、できるだけ誰も聞いていなそうなときに二言三言しゃべりもした。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4859-4860). Kindle 版.

 

劇中一番の萌えポイント。ジョージアナはホストとして客を招待した手前なにか気の利いたことを話すべきなのだが、内気すぎて会話に混ざれない。念じちゃってるのが可愛いし、がんばって喋ろうとしているところも微笑ましい。オタクはこういうしぐさに弱い。

  

もっとも、ミス・ダーシーは女招待主という立場をすっかり忘れていたようで、ミセス・アンズリーが何度も意味ありげな視線を送ったりほほえみかけたりしてからやっと気づき、軽食を運び入れるよう命じたのだった。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4870-4872). Kindle 版.

 

上がりすぎてお付きの女性に合図されるまで自分の役目を忘れてしまっているうっかり屋さんな一面もある。

 

ジョージアナはエリザベスをこの上なく尊敬していた。もっとも最初のうちは、エリザベスがダーシーに話しかけるときの陽気でいたずらっぽい様子を見て、仰天に近い驚きを覚えたようだ。これまで自分は兄を畏敬するあまり愛情表現さえ遠慮するくらいだったのに、その兄が今では公然と冗談の種にされているのだ。こうしてジョージアナは、(中略)エリザベスのお手本によって、女は夫に対して茶目っ気を発揮してもいいことが分かってきたのだ。十歳も年上の兄だと、妹にはなかなかそうさせないものである。

ジェイン・オースティン. 自負と偏見新潮文庫) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.7089-7094). Kindle 版.

 

最後には女の茶目っ気を覚えてしまったジョージアナちゃん。今後の活躍に期待である。

 

あらためて読み返してみてびっくりしたんだけど、作中でジョージアナの台詞って多分ひとつもないんだよね。地の文の表現だけで読み手に生き生きとしたキャラクター像を想像させる技術って本当にすごいなと思う。

というわけで萌豚は200年前の小説でもブヒれるという話でした。

自分でも何が書きたかったのかよくわからない。

ファンの方には重ねてお詫び申し上げます。 

 

2019年秋アニメの注目ヒロイン

現時点でのTOP3を発表します。なぜなら萌豚なので。

 

メリダ=アンジェルちゃん(アサシンズプライド

私、放送前からずっとメリダちゃんが可愛いって言ってたよね!

サラシャ=シクザールちゃんも好みなのでこれからの出番が楽しみ。

 

・大星林檎ちゃん(超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!)

はじめて見たとき可愛すぎてひっくり返っちゃった。林檎ちゃんのためだけにこのアニメを見ていると言っても過言ではない。

 

・シェフィールドちゃん(アズールレーン

見た目がめちゃめちゃ好みだったのでなんと公式サイトでわざわざ名前を調べた。これはすごいことですよ。

 

SAOはセルカちゃんをもっと出してください。

 

今期はまあまあ良いペースでアニメ追いかけられてる気がする。

あと、『THE BOYS』っていう海外ドラマが面白いと評判なのでそのうち見てみたいなと思ってます。『ウォーキング・デッド』の最新シーズンも見なくちゃいけないんだけど死ぬほどサボってるのでなんとかしたい。

 

(おわり)

 

*1:男系の相続人のみが一括してすべての財産を受け継ぐこの仕組みは「限嗣相続制」と呼ばれ、『ダウントン・アビー』におけるグランサム伯爵家でも同様の問題が発生するところから物語が始まる