テレビとエンターテイメントを愛する全世界のみなさん、第72回エミー賞授賞式へようこそ。司会のジミー・キンメルです。
みなさんご存知のとおり、このプライムタイム・エミー賞はその年を代表するもっとも優れたテレビ番組に贈られる賞です。
ここまでドラマ部門、コメディ部門、リミテッド・シリーズ部門においてそれぞれ素晴らしい作品や役者が選ばれてきました。
そして最後に発表されるのが、この夏アニメ部門です。
今回の授賞式は72年の歴史の中ではじめてのリモート開催となりました。
本来であればこの会場に集まってくれていたはずの今期アニメヒロインちゃんたちがこの場にいないことが残念で仕方ありません。今年は彼女たちの等身大パネルで我慢しましょう。
もちろんジェイソン(訳注:ジェイソン・ベイトマン)、君が要らないって意味じゃないよ。
今回発表するのは「主演男優賞」「助演男優賞」「主演女優賞」「助演女優賞」「作品賞」の5部門。それでは始めましょう。
ところで、授賞式が終わったら天空寺宙ちゃんの等身大パネルはぼくが持って帰るよ。マット・デイモンに盗まれないうちにね。
- 主演男優賞(Outstanding Lead Actor)
- 助演男優賞(Outstanding Supporting Actor)
- 主演女優賞(Outstanding Lead Actress)
- 助演女優賞(Outstanding Supporting Actress)
- 作品賞(Outstanding Summer Animation)
主演男優賞(Outstanding Lead Actor)
まずは主演男優賞の発表です。
主人公は作品全体をリードする存在。いくらヒロインが可愛くても男に魅力がなければ作品は色褪せてしまいます。どの作品とは言いませんが…。
ともかく、主人公はヒロイン以上に魅力的でなりません。
今年の主演男優賞は最有力候補者があまりにも圧倒的すぎるため他の候補者が全員ノミネートを辞退するという未曾有の事態となりました。
それでは発表しましょう、主演男優賞は……
暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴード様です!!!!!
史上最強の始祖でありながら子孫たちへの愛を惜しまない偉大な御姿を一度でも見れば、今年どころかここ2000年で最高の主人公といっても言いすぎではないことがわかるでしょう。
来月ラスベガスで開催されるビルボード・ミュージック・アワードにアノス様応援歌合唱曲がノミネートされたというニュースも記憶に新しいですね。
ここで今朝のニューヨーク・タイムズの論説を紹介しましょう。
アノス・ヴォルディゴードは我が国の誇る偉大なる魔王たちーーダース・ベイダーやマイケル・コルレオーネ、あるいはウォルター・ホワイトーーの功績を塗り替えるまさに新時代のリーダーである。
始祖の超然にして寛容たる精神性こそ、今のアメリカに必要とされるものだ。
視聴者のみなさん、有権者登録はもうお済みですか?
選挙へ行きましょう、そしてアノス様に投票しましょう!
助演男優賞(Outstanding Supporting Actor)
アニメ部門における助演男優の役割はただひとつ、主人公とヒロインの関係を邪魔しないこと。一般的に出番が少なければ少ないほど良いとされています。
その一方で、時として魅力的なサイドキャラクターの男が登場することがあるのもまた事実。
果たして今回、授賞に値する男はいたのでしょうか?
さあ、助演男優賞の受賞者は……
魔王学院の不適合者よりレイ・グランズドリィ!!!
ハーレム物に男友達は不要という下馬評を覆えす見事な活躍っぷりに多くの観客が沸き立ちました。
終盤で新たな事実が明かされることによって一層キャラクター性が深まり、魔王アノスと並び立つにふさわしい存在に。
また、ヒロインの一人を主人公以外の男とくっつけるというこれまでのハリウッドでは追放に値するとされていた展開を不快感を与えることなく描き切ったのはまさに現代の驚異と呼べるでしょう。
思わず応援したくなってしまうレイとミサの恋模様は、まるでシェイクスピア劇を見ているかのようです。
ここまででなんと男優賞2つを魔王学院の不適合者が独占するという結果に。
コメディ部門の賞レースを総なめした『シッツ・クリーク』と同じく快進撃がこのまま続いてしまうのでしょうか、それとも他のアニメが食らいつくのか。
続いて注目の主演女優賞・助演女優賞の発表です。
果たして24歳で最年少受賞を果たしたゼンデイヤの記録を塗り替える者は現れるのでしょうか?
主演女優賞(Outstanding Lead Actress)
スピルバーグ監督はかつてこう言いました。「メインヒロインが可愛くないアニメなどサメの出ないジョーズと同じだ」と。
アニメにおけるメインヒロインは作品の看板そのものです。
人々は萌え萌えなヒロインを見たいがために貴重な時間を割き、テレビの電源を入れ、アニメを視聴するのです。
ヒロイン無しでアニメは成り立ちません。
この部門では、この夏に放送されたアニメに登場した魅力的なメインヒロインたちの中から、もっとも素晴らしいただ一人を称えます。
発表へ移りましょう。今年の受賞者は……
サーシャ・ネクロン&ミーシャ・ネクロンちゃん!!!!!!!!
やった〜〜〜〜〜!!!!!!!!!
極めて珍しい二人同時受賞となりましたが、彼女たちの根源は二人で一人なのでそれも当然のこと。分かつことなどできません。
相反するキャラクター性から繰り出される人間ドラマとブヒの化学反応に全米の萌豚が涙したとか。
『アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』で双子の兄弟を一人二役で演じ、今年のリミテッド・シリーズ部門で主演男優賞に輝いたマーク・ラファロ氏からもお祝いのコメントが届いております。
ラファロ:サーシャとミーシャの美しい姉妹愛はぼくの演技にも多大なるインスピレーションを与えてくれた。
見た目も性格も異なる彼女たちが過去や軋轢を乗り越え、最後にはひとつの存在として融合する姿はまさにぼくたちアメリカ国民が目指すべき理想の形だ。
サーシャ、ミーシャ、あらためておめでとう。ナターシャの映画(訳注:ナターシャ・ロマノフが主役のマーベル最新作『ブラック・ウィドウ』)が延期になってしまって落ち込んでいた気持ちがこれで吹き飛んだよ。
助演女優賞(Outstanding Supporting Actress)
今年の助演女優賞は1949年から続いてきたエミーの歴史上もっとも熾烈な激戦となりました。
通常ノミネートの対象となるのは5名程度ですが、今回は審査員の中でも意見が割れたことから急遽ノミネート数を増枠するという異例の措置が取られました。
今回の候補者はティアラ、ロゼッタ、ラヴィ、アシュレイ、リネット、エミリア、あるふぁ、サルサ、ガーネット、ツバキ、ナデシコ、カエデ、ラトゥーラ、シャンペ、メアリーベリー、アンジェリカ、ルキフェル、ユエ、ミルフィーユ、フィオナ、エリザ、クロエ、カミラ、ユズリハ、エキドナ、ミネルヴァ、ダフネ、テュフォン、セクメト、カーミラ、ミサ・イリオローグ、エレン・ミハイス、マイア・ゼムト、シア・ミンシェン、ジェシカ・アーネート、カーサ・クルノア、ヒムカ・ホウラ、ノノ・イノータ、シェリア・ニジェム、エミリア・ルードウェル、エレオノール・ビアンカ、ゼシア・カノン・イジェイシカ×10000。
以上、計10,041名がノミネートされております。
みんな優勝!!と言いたいところですが、誰か一人に決めなくてはならないのが賞レースの残酷なところ。
この『シビル・ウォー』さながらの大激戦を制してエミーの栄冠に輝いたのは一体誰なのか。
それでは発表します。助演女優賞は……
もちろんカエデちゃん!!!!
だってかわいいもん!!!!!!!!!!!
オーシャンズをはるかに上回る超豪華キャストで話題となったラピスリライツ。
予想どおり激しい接戦となりましたが、勝ち残ったのはやはりヤマト仕込みの萌へしぐさで数々の萌豚を魅了した「この花は乙女」の三女カエデちゃんでした。
キャリア最高の演技と評される第5話の見事な目の死にっぷりには、『SAW』シリーズで死体役を好演したトビン・ベル氏も「Japanese Wanya...の真髄を見たよ。ぜひSAWの次回作に出演してほしい」と舌を巻いたとのこと。
すでに『ミッドサマー』のアリ・アスター監督や『透明人間』のリー・ワネル監督など著名なクリエイターたちが熱心にオファーを始めているとの報道もあり、カエデちゃんの次回作に期待が高まります。
作品賞(Outstanding Summer Animation)
テレビ番組においてもっとも権威ある賞、それがエミー作品賞です。
ただ面白いというだけでは、この賞の栄誉に浴することはできません。
リミテッド・シリーズ部門で作品賞に輝いた『ウォッチメン』は、アメコミ作品としてのエンターテイメントの側面を持つ一方で、闇に葬られたタルサの迫害の歴史にスポットを当て、人々の持つ根深い偏見や対立意識をも浮き彫りにしました。
この賞に選ばれる作品は、観客を楽しませるのと同時に、いかに社会に影響を及ぼし、より良い世界へ導けるかが重要となります。
それでは発表の時間です。栄えある第72回エミー賞夏アニメ部門作品賞は……
おめでとう!!!
放課後ていぼう日誌!!!!!!!!!!!!!
やはり強い! 大本命の放課後ていぼう日誌が、見事に作品賞を獲得。
IMDbではスコア10/10、大手レビューサイトのRotten Tomatoesでも批評家支持率・観客支持率ともに驚異の100%を記録。
USAトゥデイやガーディアンといった主要紙でも軒並み大絶賛。
地方のハイスクールに転校したティーンエイジャーの少女・鶴木陽渚ちゃんが「ていぼう部」と呼ばれるクラブでの活動を通じて釣りの魅力を知っていくアニメです。
美しく、しかしながら侮ってはいけない自然の厳しさ・壮大さを描いた本作は、まさにアレハンドロ・イニャリトゥの『レヴェナント』の精神的続編と言えるでしょう。
目を死なせたり輝かせたりしながら釣りの楽しみを学んでいく陽渚ちゃんの一挙手一投足を全米の視聴者が固唾を飲んで見守りました。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、合衆国農務省が本格的にコラボレーションへの動きを始めたとのこと。
スミソニアン博物館に放課後ていぼう日誌のBlu-rayが並ぶ日もそう遠くはないでしょう。
そして釣りに興味を持ったみなさん、この夏はぜひオザークへようこそ。
授賞者・候補者のみなさん、本当におめでとうございました。
トロフィーは動物の死骸と一緒に自宅の前に投げ込んでおきますのでご心配なく。
それではまた秋アニメでお会いしましょう。
アメリカに神の祝福を。
◯
ふざけすぎてそろそろ怒られそう。
これ書くために昨晩2時まで起きてエミー賞の放送見てたのは内緒。
(おわり)